私がマスクの意味について改めて考えたのは、新型コロナウイルスの流行がきっかけでした。流行のピークの時期には、日本ではマスクをつけていないと出歩きにくいほどでした。それは、お店などの閉鎖空間だけでなく、人との距離が保たれている屋外でも同じでした。
なぜでしょうか。日本では「自分が感染しているかもしれない」という前提で、周囲にうつさないように行動するという考え方があります。また、多くの人がマスクをしている状況では、自分だけ外すことに心理的な抵抗を感じる人もいました。日本では、マスクは自分を守るためだけでなく、他人への配慮として着けるものでもあるのです。
コロナ流行期にはマスク不足が問題となり、店では購入数の制限が設けられました。政府が家庭にマスクを配布したこともあります。一方で、人々はマスクを暗い象徴としてだけ捉えていたわけではありません。花柄のマスクや肌になじむ色のマスク、呼吸しやすい形のマスクなどが登場し、自分で作る人も増えました。マスクを少しでも前向きな気持ちで使えるように、さまざまな工夫が生まれたのです。
実は、日本ではマスクはコロナ以前からよく使われていました。風邪のときだけでなく、のどの乾燥を防ぐとき、花粉症の季節、匂いの強い食べ物を食べたあと、化粧をしていないときなど、さまざまな理由で使われます。このように、日本ではマスクは「病人がつけるもの」というよりも、便利な日用品として広く使われています。
日本には「目は口ほどに物を言う」という言葉があります。言葉にしなくても、感情や本心は目や表情から伝わるという意味です。そのため、日本では口元を隠すマスクよりも、目を隠すサングラスのほうが警戒されることもあります。(最近はカラーレンズの眼鏡も一般的になり、以前ほどではありませんが。)
コロナのあと、長くマスクをしていた若者の中には、素顔を見せることに抵抗を感じる人もいました。マスクが服の一部のような存在になり、安心できるアイテムになっていたのかもしれません。日本ではマスクは、とても便利な日用品です。これからも状況に合わせて、上手に付き合っていきたいものです。