日本語を学び始めると、最初に出会う文字は「ひらがな」です。丸くやわらかいこの文字は、日本語の入口のような存在です。

日本語の文字は、ひらがな・カタカナ・漢字の三つがあります。もともと日本には文字がなく、中国から伝わった漢字がその始まりでした。最初は漢字を意味として使ったり、日本語の音を表すために借りたりしながら、日本独自の書き方が生まれていきます。
その中で、日本語の音を表すために漢字をそのまま使った「万葉仮名」という表記があり、そこから漢字をくずして生まれたのがひらがな、漢字の一部を取り出して生まれたのがカタカナでした。

平安時代になると、文字の使い方には立場や役割が表れます。正式な学問や政治の世界では、主に漢字が使われていました。公的な文書や記録は中国の文章である「漢文」で書かれ、それを学ぶのは主に男性でした。男性貴族にとって漢字は教養であり、仕事や社会と結びついた文字だったのです。
一方で、宮廷の女性たちはそのような公式の教育を受ける機会が限られていました。その中で、日本語の音をそのまま表すひらがなが広がり、日記や手紙、物語といった豊かな表現の世界が生まれていきます。『源氏物語』の紫式部はひらがなを中心に物語を紡ぎ、『枕草子』の清少納言はひらがなに加えて漢字も巧みに使いながら、知的でいきいきとした文章を書きました。ひらがなは、そうした人々の感性とともに育まれていった文字でもあったのです。

江戸時代になると、漢字とひらがなを組み合わせた現在に近い文章の形が広く使われるようになります。手紙や読み物、寺子屋での学びを通して、多くの人々が文字に親しむようになりました。

やがて明治時代、学校教育が整うと、教科書にはカタカナが多く使われるようになります。直線が多く形がはっきりしているため印刷しやすく、統一しやすかったからです。その後、戦後の教育では、日常のことばにより近く、やさしい印象を持つひらがなが、子どもたちが最初に学ぶ文字として定着していきました。

現代でも、子どもが初めて書く文字はひらがなです。ひらがなが書けるようになると、漢字が書けなくても、自分のことばで文章を書くことができます。まずは音をそのまま形にすることから始める。それが日本の文字の学び方です。

ひらがなの順番にも変化があります。昔は「いろはにほへと〜」という歌で文字を覚えていました。すべての音が一度ずつ登場する歌で、日本人の美意識や無常観が込められています。その後、発音の仕組みに合わせて整理されたのが「あいうえお」。母音から始まるこの並びはとても合理的で、日本語を学ぶ人にとっても理解しやすい順番です。「あいうえお」をマスターしたら、次はぜひ「いろはにほへと」にも触れてみてください。

ひらがなの丸みのある線は、風の流れや水の動きのようにやさしく続いていきます。上手に書こうとしすぎなくても大丈夫。線をつなぐ感覚を楽しみながら、さぁ、ひらがなを書いてみましょう。