書道と聞くと、「字をきれいに書くこと」と考える人が多いかもしれません。しかし日本では、書道は単なる技術ではなく「道」として位置づけられてきました。武道や茶道、華道と同じように、書道も人の姿勢や心の在り方と結びついた文化だと考えられています。

「道」とは、ゴールに早くたどり着くための近道ではありません。上達の過程そのものを大切にし、時間をかけて自分を磨いていくという考え方です。書道においても、まずは「型」を学ぶことが基本とされています。お手本を忠実にまねし、線の太さや筆の動かし方、余白の取り方などを、繰り返し体に覚えさせていきます。

日本には「守破離(しゅはり)」という学びの考え方があります。型を守り、次に応用し、やがて型から離れて自分の表現にたどり着くという段階です。書道もこの流れと深く関係しています。最初はお手本を写すところから始まり、時間をかけて、その人だけの線やリズムが生まれていきます。

同じ文字を書いていても、書き手や表現したい内容によって、印象は大きく変わります。力強い線、やわらかな線、余白の使い方によって、文字は表現へと変わっていきます。技術だけでなく、積み重ねてきた時間や姿勢までもが、書に表れると言われるのはそのためでしょう。学校の書道の授業でも、同じ文字を書いていても、生徒一人ひとりの個性が自然と表れてきます。また、書道にはその行為自体がもたらす効果があります。筆を持ち、一画一画に集中することで呼吸が整い、気持ちが落ち着くと感じる人もいます。

こうして見ると、書道とは単に文字を美しく書くための技術ではありません。型を学び、型を応用し、やがて自分なりの表現へと進んでいく過程そのもの、つまり「道」なのです。文字を書くという行為を通して、自分の姿勢や心と向き合う。書道は日本文化の中で育まれてきた「自分を磨く」ためのひとつの方法だと言えるでしょう。