今くらいの時期、日本のコンビニやスーパーで太巻き寿司の広告を見かけたことはありませんか?その広告を見てみると、お肉たっぷりの焼肉太巻き寿司、いくらがこぼれる贅沢な海鮮太巻き寿司、太巻き寿司風に作られたロールケーキなど、「太巻き寿司」をキーワードにした商品になっているはず。実はこれ、一般的な太巻き寿司ではなく「恵方巻(えほうまき)」と言って、節分に食べるものなんです。

節分とは、漢字の通り「季節を分ける」日で、本来は春・夏・秋・冬がそれぞれ始まる日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日を指します。ただ、現在では「春の始まり」である立春の前日だけを指すのが一般的になり、毎年2月3日ごろが節分になります(年によって少し前後します)。

この節分の日に食べるのが、恵方巻です。「恵方」とは、その年に福をもたらす歳神様がいるとされる方角のこと。恵方巻は、その恵方を向いて食べる縁起物です。全国的に広まったのは近年なのですが、もともとは江戸時代末期から関西を中心に続いてきた風習です。

恵方巻の具材は、七福神にちなんで7種類入れるのが定番とされています。代表的な具は、玉子焼き、かんぴょう、しいたけ、きゅうり、穴子、海老、桜でんぶなど。それぞれに「長寿」「商売繁盛」「子孫繁栄」などの願いが込められています。食べ方にも、ちょっとしたルールがあります。縁起担ぎを大切にする日本人らしいですよね。

① 恵方の方角を向いて食べること(歳神様から運をもらうため)

② 食べている間は話さないこと(しゃべると運が逃げるといわれています)

③ 切らずに1本丸ごと食べること(縁を切らないため)

このような特徴のある恵方巻ですが、私の記憶に残っているのは、祖母が作ってくれたとても素朴な恵方巻です。海鮮などは入らない、田舎のお寿司。具は、卵焼き、甘く煮た牛蒡や人参、かんぴょう、ちくわ、きゅうり、さくらでんぶ……だった気がします。子どもの頃に1本丸ごと食べきるのは、なかなか大変で、毎年ちょっとした挑戦でした(笑)。

今お店に並ぶ恵方巻は、私の記憶とはずいぶん違う姿をしています。ローストビーフやエビフライ入りからスイーツまで、豪華な物もたくさん見かけます。そして、恵方巻を知っている人もとても増えました。一種のスーパーの商業戦略だったのだと思いますが、一部の地域の風習だったものを、人々の暮らしに合わせて形を変えながら広げていった。その柔軟さこそ、日本の文化の面白さなのかもしれません。

その一方で、節分の一日のために大量の恵方巻が作られ、食べきれずに廃棄されてしまうという現実もあります。楽しさや賑わいの裏側に、こうした課題があることも、私たちは知っておく必要があるのではないでしょうか。普段はなかなか食べない少し贅沢な恵方巻を楽しむのも素敵ですが、私は家族で作る恵方巻もおすすめしたいと思っています。好きな具を選んで巻いてみる、それだけで節分がちょっと特別なイベントになりますよ。

型にとらわれすぎず「福を願いながら食べる」という気持ちさえあれば、それで十分だと思います。今年の節分は2月3日です。ぜひ、今年の恵方である南南東やや南を向いて恵方巻にかぶりついてみてください。