1960年代に生まれて1988年に渡米した私は、日本の経済成長を肌で感じていっしょに育った感があります。中でも1日3食を作るためにキッチンで労働しなければならなかった女性たちに便利な時代を、ずっと観てきたせいなのか、女として生きるというのをバカらしく感じたこともありました。そこですごかったのが、レトルト食品です。

日本のレトルト料理の歴史は、1960年代後半の技術革新から始まり、時短・利便性を求める社会のニーズとともに独自の進化を遂げてきました。世界初の市販用レトルトカレー「ボンカレー」の誕生が大きな転換点となりました。

1. 誕生の背景:アメリカ軍の技術(1950年代)

レトルト技術自体は、1950年代にアメリカ軍が缶詰に代わる軽量な携帯食料(軍用食)として研究を開始したのが始まりです。その後、NASAのアポロ計画で宇宙食として採用されたことで技術が確立されました。

2. 日本での始まり:世界初の「ボンカレー」(1960年代後半)

日本におけるレトルト食品の歴史は、1968年(昭和43年)2月12日に大塚食品が発売した「ボンカレー」から本格化しました。

  • 技術的背景: 医療用輸液の技術を応用した、加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)技術が用いられました。
  • 初期の販売: 当初は徳島県限定での試験販売でしたが、その手軽さと美味しさから全国に急速に広まりました。
  • 同時期の展開: 同年、日本水産が「家庭用魚肉ハンバーグ」などを発売するなど、多様なメーカーが参入しました。

3. 歴史的年表と進化

  • 1968年: 大塚食品が世界初の市販用レトルトパウチ食品「ボンカレー」を発売。
  • 1969年: パッケージに「湯煎で3分」という簡便性が大きく打ち出される。
  • 1970年代: 高度経済成長期を背景に、家庭での食事の合理化が求められ、カレー以外のレトルト食品(シチュー、ハヤシライス等)も普及。
  • 1980年代: 電子レンジの普及に伴い、電子レンジ対応のパッケージ技術が発展。
  • 2000年代以降: 具材の高品質化、有名レストラン監修のプレミアム製品、非常食(防災食)としての定着が進む。

4. 普及を支えた要因

  • 共働き世帯の増加: 時短調理のニーズに対応。
  • 高い保存性・利便性: 常温で長期保存でき、湯煎や電子レンジで簡単に調理可能。
  • 技術向上: 加熱殺菌後の食感や風味の劣化が改善された。

現在では、カレーだけでなく、ご飯、パスタソース、惣菜など数百種類以上のバリエーションが存在し、日本の食生活に欠かせない食品となっています

日本のレトルト食品市場は、2022年の出荷額が約2,760億円規模(生産量は約50万トン)で、共働きや単身世帯の増加を背景に拡大中です。カレーが全体の約3〜4割を占め、高価格帯商品やパスタソースなどの多様化も進んでいます。

市場の現状と主なトピック

  • 市場規模: 2022年のレトルト食品出荷額は約2,762億円。2024年の国内生産量は49万9,247トン。
  • 主要カテゴリー: レトルトカレーが最も多く約32〜40%のシェアを占め、次いでつゆ・たれ(約19%)、料理用調味ソース(約10%)が続きます。
  • 成長要因: 単身・共働き世帯の増加による「個食化・簡便化」のニーズ、高齢化による調理負担の軽減需要が成長をけん引。
  • トレンド:
  • 高付加価値化: 外食代替としての高価格帯商品(「ご褒美レトルト」など)が好調。
  • 健康志向: 健康イメージや機能性を持つ商品への需要。
  • 備蓄需要: 巣ごもりや災害用保存食としての日常的な利用。
  • 今後の見通し:富士経済グループによると、レトルトカレー市場は2026年までに2020年比で15%増加し、1,045億円に達する見込みです。また、IMARC Groupの予測では、レトルトパウチ市場は2025年から2033年にかけて年平均成長率(CAGR)6.85%で成長し、2033年には2億1473万米ドルに達する見込みです。

今後は、利便性だけでなく、本格的な味や、特定のライフスタイルに合わせた機能性(低塩分、低カロリーなど)を持つ商品の展開が重要になると考えられます。